第114話
瞳はこの尋問が終わり次第、遠方に住む遠縁の家に向かう事になっていた。
子供のいない中年夫婦で、瞳さえよければ預かるだけではなく、正式に養女として迎えたいとも言っているらしい。
それを聞いて、轟木はほっと胸を撫で下ろしたものだ。まだ高校生の彼女に、これまでの事はあまりにも過酷すぎた。
事件やその怒り、悲しみを忘れるなど到底できないだろうが、どうかそれ以上に幸せになってほしい。その第一歩となる養子縁組を申し出てくれた見知らぬ夫婦に、轟木は心から感謝した。
「刑事さん…」
瞳が小さな声で轟木を呼んだ。轟木が顔をあげると、彼女はまだ自分の手のひらを見つめていた。
「ん?どうした?」
「…私、リ・アクトやめるのに、何の罰も受けなくていいの?」
「ああ、もちろんだ。そんな必要はない、安心していい」
「……」
「でも『委員会』は今後の為に、どうしてもその理由が聞きたいらしい。大丈夫か?」
「はい…」
瞳は小さく頷き、やっと手のひらから目を離し、轟木を見た。そしてそのまま、手のひらを轟木に突き出すように伸ばして、こう言った。
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