第109話
†
翌朝。午前九時から轟木刑事は苛立ち、くわえていたタバコのフィルターを犬歯でギリギリと噛み潰していた。
二日ほど前だっただろうか。椿から、今日の午前八時に警視庁で有山瞳の尋問を始める、必ず同席しろという旨の連絡が入った。
あの小憎らしい若造にこれ以上でかい顔をされるのが我慢できず、轟木は七時に出勤してきた。
話を聞くだけだ、拷問まがいの真似は決してしない。だから、安心したまえ。
電話ではあんな事を言っていたが、分かるもんか。少しでも瞳ちゃんを動揺させてみろ、ただじゃおかねえ…!
そこまで意気込んで待っていたのに、八時を過ぎても椿は現れなかった。
そして一時間遅れの午前九時になって、椿の部下だと名乗る三十代くらいの女が有山瞳を連れてやってきた。
女は、黒いワンピースに、同じく黒のレースが前にかかった大きな鐔帽子(つばぼうし)を身に付けていた。
『委員会』の奴らはとことん喪服にこだわりやがる、と轟木は呆れた。そんな彼に、女は有山瞳を差し出すようにしながら言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます