第108話
「友達でいいだろ、大和」
高明のまっすぐな言葉に、須藤は「は、はい。高明様」と答える。それに対して、高明は言った。
「高明様もなしだ。友達なら高明、だろ」
椿は驚いていた。
高明との付き合いはもう三年ほどになるが、彼のごく親しい友人には会った事がない。誰に対しても柔らかく接しはするが、多忙を極める彼自身が気の置ける友人を作ろうとしなかったからだ。
年相応に青年らしく笑い、友を求める高明の姿を、椿は初めて見た。しかもその相手は自分の弟――誇らしく思えた。
その時、椿の携帯電話が鳴った。椿は二人から離れ、電話に出た。相手は部下からだった。
「私だ。…ああ、分かった。充分な確認を取ってくれ、すぐにそっちへ向かう」
電話を切った椿の顔は、仕事の顔になっていた。
肩越しにちらりと見る。軽い会話を始めた須藤と高明の邪魔をする気は起きなかった。
椿は早足でロビーを抜け、入り口の自動ドアをくぐっていった。
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