逢瀬
第101話
本郷紗耶香の誕生日パーティーは予定より小一時間ほど延びた後、静かに終わりを告げた。
風見桐子の件は、全ての客に兄の高明から箝口令が敷かれた。帰り際にボーイから小さな包みを受け取り、誰もが文句一つこぼさず大ホールから出ていった。
『クリスタル・ビッグ』の正面入り口にたくさんの高級車が列をなし、主人を待っている。須藤と紗耶香は大ホールのバルコニーに出て、それらを見下ろすように立った。
やがて客達が入り口から出てきて、バルコニーを見上げた。
「紗耶香様、お休みなさいませ」
「ごきげんよう」
彼らがそれぞれ挨拶すると、紗耶香は右手を挙げて応える。満面の笑顔だ。須藤はそれを数歩分後ろから見守った。
誰からも愛される、素敵な女の子だと須藤は思った。
須藤が紗耶香と初めて会ったのは、彼がまだ高校一年――十六歳の時だった。
その年、椿が『委員会』に配属となり、その入会の挨拶として家族一同で本郷家に出向いた。
『委員会』の礼装としてシワ一つない喪服スーツを着こなす椿と「あの人」を見て、一人だけ学ラン姿である事が居心地悪く思ったのを覚えている。
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