第96話
だが、デリンジャーから銃弾が出る事はなかった。女の指が引き金を引こうとした瞬間、二人の男が女の身体に飛び付いたからだ。
一人は須藤だった。女の背後から羽交い締めにするような形で抑えている。
もう一人は高明だった。紗耶香を庇うように前に立ち、女の手からデリンジャーを奪い取ろうとする。
「いやっ、いやっ!」
女は須藤と高明から逃れようとじたばた暴れるが、男二人の力に敵う訳がなく、あっという間にデリンジャーを奪われてしまった。
「くっ…」
暴れる女の身体が須藤の脇にぶつかる。まだ完治していないアバラが痛み、女を抑える力が緩んだ。
それをいち早く見計らい、高明が女の肩を掴んだ。そして須藤から女を引き剥がし、自分達の足元に叩き付けた。
「きゃあ~!」
ここで客の誰かが、悲鳴をあげた。一つの悲鳴が大きな動揺とざわめきを呼び、大ホールの中は混乱が生じ始めた。
壇上の様子を見て、椿も駆け付けていた。アバラの痛みで立っていられず、膝を付いた須藤に彼の目が見開いた。
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