第89話
男鹿は大ホールから少し離れた、従業員専用の仮眠室に通されていた。
「今の時間、誰もここを使わないそうなので、少しお休み下さい。何かあればお呼び下さい」
そう言って根岸が出ていくと、仮眠室はしんと静まり返った。
男鹿はふらつく身体を何台かあるベッドの一つに横たえた。
普段あまり飲まないアルコールを一気に飲んでしまった事で、もう頭がぐらぐらする。明日は二日酔いを覚悟しなければならない。
ああ、まいったなぁ。明日、皆に迷惑をかけてしまうじゃないか…。
そんな事をぼんやりと考えていたら、枕元に置いてあった男鹿の携帯電話が等間隔のバイブレーションで揺れ出した。
液晶画面を見れば「非通知設定」の文字。万一、自分が捕まってもこの携帯電話から足がつかないようにする為の処置だ。
男鹿はゆっくりと身体を起こしてから、電話に出た。
「…もしもし」
『オガさん、大丈夫か…?』
電話の向こうから、ユウヤの声が聞こえてきた。
ユウヤの声には沈痛さが伴っていた。一呼吸置いた後、彼は『すまない』と謝ってきた。
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