第87話
「うわっ」
つんのめりそうになるが、両足を絨毯に踏ん張らせてどうにか耐える。須藤は反射的に振り返った。
「ああ、どうもすみません~…」
アルコール独特の臭いが、つんと鼻に痛い。相当飲んでいるのか、顔もほんのり朱に染まっていた。
ふらふらと足元もおぼつかない相手の顔を、須藤は知っていた。日本大国の宝だと褒めちぎられ、A国での活躍が大評判の男だった。
「お、男鹿検事…?」
「おや、私をご存じなのですかな~?」
酒に酔っている男鹿恒靖の両手が、がっしりと須藤の肩を掴む。須藤はそれを支える形となって動けなくなり、ひとまず口を開いた。
「け、警視庁国家危機対策安全課の須藤大和と申します…」
「ああ~!我らの敵、テロリスト共を追っている勇士でありますか!ご苦労様です!」
「どうされたのですか?あなたのように聡明な人が…」
「いやいや、とっても最悪な事がありましてね~…」
男鹿が胸元のポケットをがさがさと探り、一枚の新聞の切れ端を取り出し見せてきた。
須藤は思わず「あ…」と声を漏らす。それは、朝から何度も聞いたテロ組織ブラッディ・クロウの処刑に関する記事だった。
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