第85話
同じ頃、須藤大和は『クリスタル・ビッグ』の大ホールの手前で困り果て、右往左往していた。
退院後、須藤を待っていたのは課長からの長い小言であった。
一緒に小言を受けていた轟木はどこ吹く風で、まるで他人事のようにそっぽを向いている。それがまた課長の怒りを助長させ、須藤を悩ませた。
それから約一週間、二人はテロリストに関する膨大な資料の整理を押し付けられていた。
メンバーが大半処刑され、すでに存在しないもの。国内に潜伏しているもの、海外逃亡しているもの…全てを合わせれば千は下らない。
「ま、最近はレッド・ティアーズの奴らが頑張ってるから、こいつらは高みの見物だろうな」
そう言って、轟木が何冊もの分厚いファイルを手の甲で叩いていくのを須藤は覚えていた。
この日も、整理に時間を取られた。電話で椿に遅れると伝えれば、「このバカ」と怒鳴られた。
須藤が警視庁を出たのは、午後七時を回っていた。パーティーはとっくに始まっている。
自宅マンションに帰り、まだ外せないコルセットの上に自分に似合うとは思えない礼装を身に着ける。
アバラのヒビは順調に回復しているものの、車の運転はまだ無理だ。電車を乗り継ぎ、『クリスタル・ビッグ』に到着した時には八時になっていた。
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