第83話
ラジオからは、夕方のニュースの時に流れた情報と同じものが繰り返されていた。
『本日未明、日本大国に対する国家反逆罪で捕らえられていたテロ組織「ブラッディ・クロウ」のメンバー四人の処刑を執行したと、委員会から発表がありました。処刑されたのは…』
少女のラジオを持つ手がギュッと強くなる。それに気付き、高明は少女に静かに近付いた。
「紗耶香」
少女は名を呼ばれると、ビクリと肩を震わし、まぶたを閉じたまま振り返った。
「…お兄様?すみません、気が付かなくて。私…」
手探りでラジオの電源ボタンを切り、そっと窓枠に立て掛ける。薄く伸ばしたファンデーションに、涙の痕がくっきり残っていた。
クスッと笑い、高明は紗耶香の頬に手を当てた。
「紗耶香。大和君はもうすぐ来るから、子供みたいに拗ねるなよ」
「拗ねてなんかいません」
「お前の十七歳の誕生パーティーだ、彼が祝ってくれない訳あるか」
「それも心配していません。大和さんは約束を破る方じゃないですもの」
「じゃあ、何で泣いてるんだ?」
高明の指先が、紗耶香のきれいにカールされたまつ毛に乗る涙を優しく拭う。紗耶香はされるがまま、じっと動かなかった。
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