第81話
「俺の方が年下なんだから、その『高明様』と敬語はやめてくれないか?確か、君の弟と同い年だ」
「いえ、とんでもない。高明様は日本大国の未来を担っていくお方です。私ごとき一役人がこうしてお声かけていただくだけでも…」
「椿君、言葉が長いよ」
椿はそっと頭を持ち上げた。誰に対しても柔らかな態度で接し、微笑みを崩さない高明を、彼は心から尊敬していた。
「恐縮です」と返す椿に、高明は右の頬を指で掻く。そして、ふと気付いたように言った。
「大和君は?まだ来てないのか?」
「申し訳ございません」
椿がまた頭を下げる。
「仕事で遅れると連絡がありまして」
「なるほど、それで紗耶香がご機嫌斜めなのか」
「女性を待たすなど、本当にとんでもない愚弟でして」
「気にしなくていいよ。テロリストを一掃する大事な職なんだ。紗耶香は俺が宥めておくから」
それじゃあ、と片手を挙げ、高明は大ホールの出入り口に向かって歩きだす。椿はその背中をまっすぐに見送った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます