第79話
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そのホテル、『クリスタル・ビッグ』は日本大国の中で一、二を争うと言われるほどの高級感を醸し出していた。
壁と床は全て大理石でできており、天井の至る所に大きくて美しいシャンデリアが吊られている。ロビーや客室に飾られている壷や絵画は、どれも一級品ばかりだ。
百年以上に渡って続く大不況の中、このホテルを利用できるのは諸外国のVIP達と、日本大国の限られた人物のみである。
そんな『クリスタル・ビッグ』の大ホールで、あるパーティーが開催されていた。
立食バイキング形式を取ったそのパーティーにはおよそ二百人以上が出席し、タキシードやドレスを着飾った各々がぜいたくな料理に舌鼓を打っている。
だが、壇上にこのパーティーの主役たる人物が見受けられない。
立食パーティーにも関わらず、壇上にあるのは立派な造りの椅子が一脚。それがぽつんと寂しそうに佇んでいた。
そんな、誰も座らない椅子を、椿 孝一はホールの隅でじっと見つめていた。
料理に手をつけず、ひたすら椅子を見つめ続ける椿に、一人の若い男が近付いてきた。
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