第78話

「僕にパソコンを教えてくれたのは冴子さんだ。冴子さんがいたから、今の僕がいるんだ…」

「一人だけしんみりしてんじゃねえや、ガキ」


 リュウジが短く鼻をすすった。珍しく、その口元が悔しそうに引き締まっていた。


「今思えば、江崎も颯太もいい奴だったな。訓練でしごかれてる間はムカついてしょうがなかったけど…」


 リュウジは叩くようにテレビの主電源ボタンを押した。映像がぶつんと途切れた液晶画面は真っ暗になり、地下のアジトはしんと静まり返った。


 ナオトはのろのろと椅子に座り、再びパソコンのキーボードに向かう。キーボードにポタポタと涙が落ちた。ナオトはそれを隠すように、キーを素早く叩き始めた。


 カチャカチャとキーボードのキーが弾かれる、小さくて切ない音。リュウジはそんな音の連続に耐えられず、「ああ~!」と叫びながら頭をガリガリと掻いた。


「こんな時にユウヤとおっさんはどこ行きやがったんだよ!」

「ユウヤさんは帰ったよ。オガさんは今夜のパーティーに出席するって、さっき連絡が…」

「はぁ!?何だそりゃ!仲間が殺されたっつーのに、あいつらは」

「やめろよ、リュウジ」


 リュウジの言葉を遮り、ナオトは言った。


「少なくともオガさんは、これから言いたくもない事を言わなきゃいけないんだから…」

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