第77話
女性キャスターの言葉が続く。
『なお、吉川達夫は元国家認定国際検事の肩書きを利用し、A国から武器や資金などを調達。「ブラッディ・クロウ」を支援していた模様であり、これに対し委員会は…』
もう聞いていられなかった。
ナオトは涙で揺らぐ視界の中、手近にあったグラスを掴み、テレビに向かって投げ付ける。
ズガーン!ナオトの耳につんざくすさまじい音。だが、砕けたのは液晶画面ではなく投げたグラスだった。
「おいおい。皆の数少ない娯楽品を壊すんじゃねえよ」
ナオトは顔も上げず、唇を噛み締めたまま何も言わない。そんな彼に、リュウジは呆れたように首を傾けながら、撃ったばかりでまだ熱を保っている拳銃を脇のホルスターに納めた。
テレビ画面は、まだ淡々と話す女性キャスターを映していた。
リュウジはつかつかとテレビに近付き、女性キャスターの顔をじっと見つめながら言った。
「はん、化粧が濃い女だな。冴子の方がよっぽどいい」
「冴子さん、可哀想だ…」
ナオトが振り絞るようにして声を出した。
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