落涙

第76話

お茶の間に人気がある夕方のニュース番組で、花形の女性キャスターが一枚の原稿を読み上げた。


 淡々とだが、流暢な口調で話す女性キャスター。その内容は明るい話題ではない。


 少なくとも、両手の指は忙しくパソコンのキーボードを叩いていたが、耳をしっかりと傾けていたナオトにとっては辛いニュースだった。


『本日未明、日本大国に対する国家反逆罪で捕らえられていたテロ組織「ブラッディ・クロウ」のメンバー四人の処刑を執行したと、委員会から発表がありました。処刑されたのは…』


 ピクッと反応したナオトの指が止まる。思わずテレビ画面に目をやると、見知った顔の写真が四枚映し出されていた。


 四枚の写真の下には、それぞれ名前が書かれている。


 どれも本名に間違いないだろう。左から江崎勝(えざきまさる)、間山冴子(まやまさえこ)、安藤颯太(あんどうそうた)と続き、最後は吉川達夫(よしかわたつお)という名で終わっていた。


「そ、んな…」


 椅子から立ち上がり、ふらふらとテレビに近付く。画面は最後の一枚、吉川達夫の名が記された五十代の男の写真のアップに切り替わっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る