第61話

オガが言った。


「リュウジ君、仲間を挑発するのはやめなさい。君の悪い癖ですよ」

「ぐっ…」

「ナオト君もです。彼はもう仲間なんですから、過去の罪を責めるのはやめましょう」

「でも…!」

「ナオト君がいなかった間の作業は私がやっていましたが、年寄りに長時間のパソコンはきついです。明日から頑張って下さいね。それから…」


 オガはニコッと笑ってから、二人の腕を離した。リュウジはじんじんと痺れる腕を擦り、「ユウヤといい、おっさんといい…ここは力自慢大会か!ああ、くそ!俺も今日は寝る!」と別のドアをさっさとくぐっていった。


 残されたナオトに、オガは背広のポケットから何かを掴み出して、そっと手渡した。


 手のひらに収まるほどのもの…不思議に思って開いてみれば、それは破けてしぼんでしまった風船だった。


「木の枝に引っ掛かっていたのを、偶然見つけました。手紙も読ませていただきましたよ、すぐに破り捨てましたがね」


 オガはゆっくり手を伸ばし、ナオトの頭を優しく撫でた。


「我々が――特にユウヤ君があきらめてないのに、君がこんな事しちゃダメじゃないですか」

「……」

「君の代わりなんかいません。あきらめずに、これからも頑張りましょう」


 されるがまま、ずっと頭を撫でられ続けるナオトだったが、やがて小さく頷き、こう言った。「ありがとう」と…。

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