第60話

「プラスチック弾にしておいて正解でしたね…でも、何故ですか?」


 オガが今度は短くも厳しい口調で言い換えたが、ユウヤの反応は変わらなかった。無言のままドアを開き、滑り込ませるようにその身を奥に運ぶ。ドアが閉じる音が響いて聞こえた。


 リュウジが少し苛立ったように、床にあったゴミ箱を蹴った。空のゴミ箱はゴロゴロ転がり、ナオトの足元で止まった。


「…ちっ!俺には撃つなと言っときながら、自分はしっかり撃ちやがって」

「ユウヤさんとお前を一緒にするな」

「おいおい。今日が初対面のはずだろ、ボウヤ?きちんと敬語を使えよ」

「ヤダね。僕がお前を知らないと思ってるのか?幻のCase.29さん」

「へえ、調べたのか?だったら、ボウヤにはちょっと刺激が強かったかな?」

「ボウヤって言うな、この人殺し…!」


 言い合いながら、徐々に距離を詰めていくナオトとリュウジ。


 お互いの腕が相手の胸ぐらを掴める距離まで近付き、ほぼ同じタイミングで二人の腕が上がった瞬間、その二本の腕をオガがしっかりと捕まえた。五十代とは思えない力強さだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る