第53話
二人の警官は運転席側のドアに回り、窓ガラスを二度三度ノックした。
「検問です。ここを開けて免許証を出しなさい」
「……」
運転手は、すぐに反応しなかった。キャンピングカーの中から、カーステレオの音楽がジャンジャン鳴り響いている。
自分達の声が聞こえていない事に少々苛立ち、警官達はさらに声を荒げ、乱暴に窓ガラスを叩いた。
「こら!聞こえているのか、検問だ!」
「早くここを開けろ!」
すると、「は、はい、今すぐ!」と慌てふためく男の声が聞こえた。
曇った窓ガラスがゆっくりと下にスライドされていく。開かれた窓から現れたのは、すっかり困り果てた様子の五十代の男の顔だった。
「…あっ!あなたは!?」
警官の一人があわあわとうろたえた後、すぐに敬礼する。残った一人は仲間のそんな様子が分からず、首をかしげるだけだ。
「おい、どうした?早く身分確認を…」
「バカ!この方がどなたか知らないのか!?国家認定国際検事の男鹿恒靖(おがつねやす)先生だぞ!」
男鹿恒靖…、その名を聞いてもう一人の警官も身を固くし、「し、失礼しました!」と敬礼する。
それを見て、男鹿は「…い、いやいや、やめて下さい」と両手を軽く震わした。
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