第51話

「ゴム製の模擬弾か…なめた真似をしてくれる」


 椿はもう一度空を見上げた。この様では、恐らく例の行進もレッド・ティアーズに襲われているだろう。


 椿は踵を返して、リムジンに向かった。その二、三歩後ろから、一人の兵士が何枚かの写真を持ってついてくる。


 椿が言った。


「根岸衛兵長に連絡を。そっちでの被害状況を伝えるようにと言ってくれ」

「それでしたら入電がありました。警視庁の刑事が一人、ユウヤに撃たれたそうです」

「その刑事の名は?」

「須藤大和警部補です」

「何…!?」


 椿の整った男性的な眉が釣り上がった。兵士はそれに気付かないまま、持っていた写真を差し出す。


「それからこれを。刑場破りの際、とっさに撮影したものです」


 椿は写真を手に取り見つめた。


 慌てて撮ったのであろう、写真の中のツインヒューイはその姿がブレて写っている。それでも、パイロットの男の顔は充分すぎるほど判別できた。


 椿は薄い笑みを浮かべた。


「谷 隆司(たにりゅうじ)…そうか。それほど日本大国に歯向かいたいのか、元加害者ども」


 静かな怒りを込め、持っていた写真を自分の頭上に放り投げた。写真は宙に散って、椿の周囲を舞った。

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