第43話
「ナオト…!」
「…ユウヤ、さん…」
名前を呼ばれて、少年――ナオトが薄く微笑む。ボロボロになった痛々しいその姿が、彼に与えられた苦痛の日々を表していた。
「行くぞ」
ナオトの腕を肩に担ぎ、ユウヤがツインヒューイのドアに手をかける。リュウジが操縦桿をしっかり握り直した、その時だった。
「ユウヤ~!!」
パァン!短い銃声の音が一発、大通りに響いた。
轟木は大きく息を飲み、少女を自分の背中に隠しながら、銃声の方向に目を向けた。
それは、ツインヒューイからそう離れていない、ビルとビルの間にある隙間道からであり、そこに轟木の相棒である須藤が立っていた。
須藤が構える拳銃の銃口からは、仄かな硝煙が立ち上っていた。彼が撃った事に間違いはなかった。
轟木は理解できなかった。
確かにあいつは納得いかないと感じれば、先輩だろうと上司だろうと食って掛かる。この「人質交換」もあいつにとっては納得いかないものだったろう。
だからといって、須藤が簡単に人を撃つような男ではないという事も轟木は分かっている。
だとすれば、今までこいつは何をしていた?ただ狙撃のチャンスを待っていただけなのか…?
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