第42話
「轟木さん。今から彼女をそちらに向かわせる。そっちも同志をこちらによこしてくれ」
そう言って、ユウヤは少女の小さな肩を軽く押した。
少女は二、三歩よろめきながら進むが、一度止まった。震える頬が、肩越しに振り返ろうとしている。それをユウヤの「行くんだ」という強い言葉が押し止めた。
その言葉に、少女はこくんと頷いた。そして乱暴に涙を拭うと、一歩ずつ踏みしめるようにゆっくり進んだ。
轟木も、全ての戒めから解放してやった少年の肩を押す。囚人服の少年は警戒するように轟木を見やった後、うまく動かせない身体を引きずるようにして前に進んだ。
大通りの真ん中で、少年と少女がゆっくりとすれ違う。それぞれ住む世界が違うと言わんばかりに、目も合わさず言葉も交わさなかった。
先に少女の方が轟木の元に辿り着いた。「大丈夫か?」という轟木の言葉に、少女は「はい…」と短く答えた。
少し遅れて、少年もユウヤの元に辿り着いた。
だが、精魂尽きたのか、最後の一歩がうまく踏み出せずにがくりと崩れ落ちそうになる。それをユウヤが慌てて支えた。
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