第41話

「あんたが、ユウヤ…!」


 少女は目の前にいるであろう、ユウヤに精一杯の言葉をぶつけた。


「飯塚と同じくらい許さない!お母さんの仇討ちを邪魔したあんた達を、絶対に…!」

「……」


 ユウヤは唾を拭う事もせず、少女の身体を起こした。


 そのまま少女の背中に回り、目隠しを取ってやる。少女のまぶたがゆっくり開かれていくと、ちょうど見知った中年の男が自分とそう年の変わらない少年を十字架から解放してやっているのが見えた。


 プロペラのすさまじい音が響く中、ユウヤは後ろから少女の耳に囁くようにして言った。


「このまま振り向かず、まっすぐあの刑事の元へ行くんだ…」

「…飯塚を逃がした事、絶対後悔するんだから…あんた達なんか、皆死んじゃえばいい…!」

「分かっている。だが…」


 轟木にも、ユウヤと少女の様子は見えていた。だがプロペラと風が舞う音でよく聞き取れない。


 ただ、ユウヤが少女の耳元から離れた瞬間、彼女の表情は急にやわらいだ。


 何を聞かされたのだろう、少女は大きく目を見開いている。その両目から、うっすらと涙が伝っていた。

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