第36話

「何故、すぐに撃たない?俺達への射殺許可は出ているんだろう?」

「色々としゃべってもらいたいんだよ…例えばそのヘリの入手ルートとかな」

「それなら話してもいい、これはA国のツインヒューイだ。日本大国のあり方に意義を唱える者同士、交渉は簡単だった」

「いやに素直じゃないか」

「敵とはいえ、敬意を示すに値する。根岸さんとは大違いだ」


 そう言って、ユウヤは後方を左手の親指で指す。そこには先ほどの彼の言葉通り、ツインヒューイの機関銃に怯え、カエルのように地面に伏せている根岸の情けない姿が見えた。


 ユウヤがまた歩を進めた。轟木も強く拳銃を構え直す。


 それを見たリュウジが「撃つか?」と機関銃の引き金に指をかけたが、ユウヤは首を横に振るだけだった。リュウジはチッと舌打ちして、引き金から指を離した。


「警視庁の刑事さん」


 進みながら、ユウヤが言った。


「何度も言うが、同志・ナオトを返してもらいにきた。渡してもらおう」

「止まれ。殺しはしないが、足を撃ち抜くぞ」


 できれば傷付けたくなかったが…と轟木は唇を噛み締める。


 ボバリングの風が邪魔だが、あと何歩か近付いてくれば確実に当たる。そこを狙えば…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る