第35話

ユウヤはそれを片手で受け取ると、たしなめるように男に言った。


「やりすぎだ、リュウジ」

「こんな作戦考えるあんたの方がやりすぎだろ」


 パイロットの男――リュウジが得意気に言い返す。ユウヤはそれには答えず、すっかり手薄になったトレーラーに向けて歩を進めた。


 だが、すぐにユウヤの眉がぴくりと跳ねた。十数メートルほど先にあるトレーラーの側に、まだ人が立っている。その者が腰のホルスターから拳銃を抜き、ユウヤに向けて構えた。


「警視庁国家危機対策安全課だ!国家反逆罪の現行犯で逮捕する、そこを動くな!」


 そう叫んでいたのは轟木だった。


 攻撃用ヘリのボバリングが起こす風のせいで足元がおぼつかず、なかなか拳銃の焦点が合わせられない。おまけに、砂煙が目や口に入って苦しかった。


 だが、必ずユウヤは少年を助ける為に動く。絶対に渡す訳にはいかない、ここで捕まえなければ…!


 鋭い目付きで、じっとユウヤを睨み付ける轟木。ユウヤはふうと一息漏らし、二、三歩進んでから言った。

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