第33話

それを知ってか知らずか、攻撃用ヘリの操縦席にいるパイロットがにやりとした笑みを浮かべた。


「さて…いっちょ脅してやるかな」


 ユウヤと同じく黒い上下服に身を包んだ男は、操縦桿を握り締めたまま、キョロキョロと座席の周りを探す。


 そして大きなメガホンを手に取ると、最大音量にして報道ヘリに話しかけた。


「おら、マスコミ!今すぐ撮影をやめて、とっとと撤収しな!じゃねえと…」


 男は操縦桿を巧みに操り、攻撃用ヘリの機首を報道ヘリから空に向けた。その顔は、まるでいたずらっ子のような表情だった。


 太陽の光に照らされ、機関銃の銃口が鈍い色で輝いていた。だが、次の瞬間。


 ズガガガガッ!


 機関銃の銃口から火が吹いたのと合わせて、何発かの銃弾が空に放たれた。空気を裂くような激しい衝撃と音に、また報道ヘリが揺れた。


 男は機関銃の引き金から指を離し、見下すように報道ヘリを見る。そしてもう一度機首をそちらに向け、メガホンを取った。


「今から五つ数える。その間に帰りな!…い~ち!…に~い!」


 上の指示を仰ぐ必要などなかった。こいつは本気だと分かったからだ。


 報道ヘリのパイロットは震える腕で操縦桿を握り、旋回を始める。今度はカメラマンも文句は言わず、肩に掛けていたカメラを下ろすしかなかった。

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