第28話

「ずいぶん、幼稚な策を取ったもんだなぁ。ユウヤ」


 根岸がニヤリと笑いながら言う。するとユウヤはポケットから両手を出し、小さく肩を竦めた。


「久し振りですね、根岸衛兵長。相変わらず肉と卵がお好きなようだ」

「貴様ごとき薄汚いテロリストに、俺の食生活を気遣われる謂れはない」

「今の一発で決めるべきだったな。同志・ナオトは返してもらう」

「そうはいかん。今日でレッド・ティアーズは、最悪の形で消える」


 もったいつけるように言い放つ根岸の様子に、ユウヤの眉がわずかに寄せられる。


 それを見た十字架の少年――ナオトは、なおも叫んだ。


「ユウヤさん、これは『委員会』の罠だ!早くD地区に行ってくれ!そこでCase.41が始まるんだ!」

「……」

「ユウヤさん、早く!」


 轟木は大きく目を見開いた。


 自分達が聞いていた今日の予定は、レッド・ティアーズのメンバー、ナオトの処刑だけだったはず。


 まさか『委員会』の奴ら…ふざけやがって!


「なるほど、そういう事か…」


 納得したようにユウヤがぽつりと呟く。それを見て根岸はガッハッハと下品な笑い声を立てた。

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