第25話

だが、少年のその声に、大通りの空気は瞬く間に一変した。


 静まり返っていた群衆はざわつき始め、やがて一人が二人、そして大勢が男――ユウヤに近付こうと蠢き始めた。


「ユウヤ…本物のユウヤだ!」

「きゃあ~!ユウヤよ~!」

「一千万の賞金首だ、捕まえろ!」


 群衆の波が大きくうねり、大通りはパニック状態となった。


 互いに押され、突き飛ばされて倒れ込む人々の悲鳴。親とはぐれ、泣き叫ぶ子供…。


 押し合い圧し合いの混乱状態に、轟木と須藤の動きはさらに留められた。何とか踏ん張るのが精一杯、他になすすべがない。


「くっ…!」

「ヤロウ、これが狙いか!?」


 一般市民の協力を仰ぎ、早期解決を図る為に、警察が逃亡中の凶悪犯などに褒賞金をかける制度は、日本大国となった今も変わらない。


 とりわけ、レッド・ティアーズのユウヤには一千万という破格の褒賞金がかけられていた。


 賞金首である自分が丸腰で出る事で混乱を起こし、仲間を取り返すつもりか。だとすれば、いるはずだ。


「須藤!トレーラーから離れるな!他にもまだ仲間が…」


 腰に着けた拳銃のホルスターに手を当てながら、轟木が叫んだ時だった。

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