第24話

護送車から飛び出してきた轟木と須藤は、すぐトレーラーの横までやってきたが、男のその悠然とした美しさに足が止まってしまった。


 見たところ、男は武器どころか何も手にしていない。こんな状況でなければ、まるで散歩しているかのような穏やかさもある。


 須藤は動かない自分の身体が腹立たしくなった。


 今が確保する絶好のチャンスなのに…。こんな丸腰の無防備な男に、どうして身体が動かなくなるんだ!?動け、動けったら!


 一方で、轟木の頭の中ではずっと警鐘が鳴り響いていた。


 奴らは…レッド・ティアーズは決して投降などしない。


 あの様子だと、絶対に自信があるんだ。仲間を取り返す、絶対的な自信が…。


 轟木の頬に緊張の汗が一筋流れた時だった。トレーラーの荷台の十字架に磔にされていた茶髪の若い男が目を見開いて叫んだ。


「ダメだ、ユウヤさん!来ちゃダメだ~!!」


 まだ、やっと声変わりしたかと思えるほどの高い声だった。青年というより、少年に近い声の彼は、磔のまま動かせない全身で必死にもがいていた。

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