対峙
第23話
いつの間にか、鼓笛隊の演奏も行進もやんでいた。群衆の歓声も止まっている。
大通りに響いているのは、報道ヘリのプロペラが回るけたたましい音だけ。だが、誰もそんな音など気にしていなかった。
誰もが開けた大通りの先にある、一つの人影に注目していた。
始めは揺れるように儚げに見えていたが、一分、二分と経つうちにだんだんその姿がはっきり分かるようになっていく。人影がこちらに近付いてきている証拠だった。
人影は、二十代の男だった。
整髪料か何かで固めているのだろう、短い黒髪が逆立っている。
180センチはあるだろう長身の身体に黒いシャツとズボン、さらに黒い革コートを羽織ってはいるが、彼のたくましく盛り上がった腕や鍛え抜いた腰元はそんなものでは隠せていない。
顔は大きなグラサンで隠されていた。だが、大通りの真ん中をゆっくりと、そして悠然と歩くその様に、恐れは全く見受けられない。
その道を誰にも邪魔させないと言わんばかりの存在感。そして、ただ歩き続けているだけなのに目が離せない美しさが、男から放たれていた。
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