第22話

須藤は押し黙った代わりに、今度は目の前に並べられていた報告書を手に取り、目を通し始めた。


 報告書の中には、二週間前に警視庁やマスコミに届いたレッド・ティアーズからの犯行声明文がある。


 それにはこう記されてあった。


『日本大国という名に縛られた、愚かな者達よ。我らレッド・ティアーズは、今の日本大国を決して認めない。


 我らレッド・ティアーズは、かつての日本の正しい裁きを求める。


 我らレッド・ティアーズは戦う。この国があるべき姿に戻るまで。意味なく裁かれる者が一人もいなくなる日まで。


 その為に、同志・ナオトは処刑前に必ず返してもらう――』


 レッド・ティアーズは、特にリーダーであると確認が取れているユウヤは、公言した事は必ずやり遂げる有言実行派のテロリストだ。


 どんなに警備を張り巡らしていても、きっとものともせず、マジシャンのように現れるだろう。


 今度こそ、今度こそ捕まえて、その正体を――!


 知らず、声明文を握りつぶす須藤の腕を轟木が「おい、お前何やって…」と掴んだ時だった。


『…ああっ!皆さん、あちらをごらん下さい!確認できますでしょうか…カメラさん、もっとズームでお願いします!』


 六つのモニターから、女性リポーターの興奮した声が聞こえてきた。


 モニターは鼓笛隊やトレーラーが進む大通りの先に堂々と佇む、一つの黒い人影を映している。


「出たな、レッド・ティアーズ…!」


 轟木が先立って護送車を駆け降りる。須藤も後に続いた。

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