第20話
「轟木さん」
須藤が、響きがよいテノールの声で呼んだ。
ほら、また始まりやがった…そう思いながら、轟木は「何だよ?」とわざとぶっきらぼうに答える。
すると、須藤は素早く轟木の方に顔を向け、苛立ちを押さえきれないように言った。
「僕はやはり、こんなやり方は納得できません」
「…言うと思ったぜ」
轟木は、再び須藤の顔をちらりと見た。
相変わらず、ふざけた顔立ちをしてやがるな、と思った。
やや切れ長な目の形をしているが、決して目付きが悪い訳じゃない。むしろ、警察の人間でいるには似合わないくらい優しい目だ。
すらりと通った鼻筋に、話す時にチラチラ見える八重歯。おまけにカタブツなくらい真面目ときている。警視庁内の若い婦警達がギャアギャア騒ぐのは分からないでもない。
まだ若いから、現場指導をしてやってくれ。そう言われて相棒になってやったまでは良かったが…。
少し薄毛が気になりだした頭をぽりぼりと掻きながら息を吐き出す轟木に、須藤は「聞いてますか?」とさらに詰め寄った。
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