第18話
彼女のそんなリポートを、大通りの一角に停められている護送車にある中継モニターで見つめる二人の男がいた。
一人は着崩したYシャツに無精髭といっただらしない風体の、だが、その目は使命感に燃えている中年の男だった。
やたら肌の黒い中年男はリポートが一旦切られると、くすぶっていたタバコのフィルターを忌々しげに噛み潰し、握りしめたこぶしを車の壁に叩き付ける。
そして護送車の中をつかつかと歩き、モニターの横の通信機のスイッチを入れると、マイクに向かって怒鳴った。
「俺だ、轟木だ!お前ら、どこに目を付けてやがる!奴らが何の策もなしに飛び出してくるようなタマか!またマスコミに税金泥棒だの役立たずだの言われるぞ!しっかり捜せ!」
彼の名は、轟木忠治(とどろきちゅうじ)といった。年は四十八。警視庁に新しく設けられた「国家危機対策安全課」に属する刑事だ。
彼は刑事課にいた頃から、昇進には一切目もくれず、ひたすら現場にこだわる男だった。
検挙率は常にトップ、犯人逮捕の為なら何日でも張り込んだ。そのせいで家庭をないがしろにしてしまい、妻は息子を連れて出ていってしまったが、轟木は刑事の仕事を誇りに思っていた。
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