第16話

鼓笛隊が、一分の乱れもなく機械的な行進を始めた。『歓喜の歌』と共に、ザッザッザッと足音が規則正しく響く。


 かつて長い列の鼓笛隊が大通りを進むのを見れば、何かしらの祝いのパレードを想像できただろう。


 だが、最後尾に続くものは、決して祝いを連想させるものではなかった。


 鼓笛隊の後ろに続いてゆっくり進んでいるのは、大型トレーラーだった。


 トレーラーの荷台は開かれており、そこに収められている大きな十字架が群衆の注目を集めている。


 何故ならば、十字架には人が一人、磔にされていた。若い男だった。薄汚れた囚人服に身を包み、茶色に染めた髪もボロボロに傷んでいる。


 覚悟を決めているのか、それとも数多の視線に耐えられないのか、男は終始まぶたを閉じている。まだ、あどけない顔立ちをしていた。


 大通りを臨む上空には、小型の報道ヘリが一機飛び交い、行進の様子を撮影している。


 ヘリの中では中継カメラを回すカメラマンの隣で、女性リポーターが怖々と下を見下ろしていた。まだ新人なのだろう、震える声で状況を懸命に説明していった。

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