第7話
男の子は、まだ自分の身体にたくましい腕が巻き付いている事に気付いた。
ゆっくりと顔を持ち上げてみる。腕の主が自分の父親であるとすぐに分かった。
「…父ちゃん…?」
「裕、也…」
父親は弱々しく口の両端を持ち上げ、微笑んだ。そして、男の子にしか聞こえないほどのか細い声で言った。
「…誰も、憎む…な。父ちゃ…が、悪、い…から…」
父親はそう言ってから、短く息を吐き出し、すっと目を閉じた。腕の力もぱたりと落ち、男の子の身体から離れる。もう二度と動かなかった。
「…父ちゃん?ねえ、父ちゃん。父ちゃん!父ちゃん!」
男の子はできる限りの大声で父親を呼ぶ。
車から素早く降りてきた男は、そんな親子の姿を見て叫んだ。
「父親でも息子でもいい!俺はやった!どうだ、裁いてやったぞ!妻や娘の痛みが分かったか、この野郎!ざまあみろ、あーははは!!」
狂ったかのように天を仰いで笑う男。
「父ちゃん!嫌だぁ、父ちゃ~ん!」
父親の身体にしがみついて泣き叫ぶ男の子。
男を称えるように、そして男の子を責め立てるように、集団は腕を振り上げて再びコールを始めた。
リ・アクト!リ・アクト!リ・アクト!リ・アクト…!
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