第2話

その声に応えるかのように、一斉にスポットライトが校庭の中心に集まった。


 騒いでいた人々はその光を取り囲むように、ぞろぞろと大きな輪を作り始める。


 人々の視線は、スポットライトの光の中の、ある二つに定められていた。


 そのうちの一つは、一台の黒い乗用車だった。低く響くエンジン音と共に揺れるその姿は、まるで怒りを懸命に抑え込んでいるかのような様だ。


 車のハンドルを握っているのは、三十代半ばの男であった。


 何日もろくに寝食を得ていないのか。その顔立ちは頬が痩け、目の下には隈ができている。


 だが、その眼光には鋭いものがあった。男はひたすら前方を見据え、無精髭が生えた口元を動かし、ぶつぶつと呟く。


「…やってやる、やってやる。俺は間違ってない、間違ってないんだ…」


 同じ言葉を何度も繰り返す男は、見据えた先から、決して目を逸らさなかった。


 それほどまで覚悟を決めた男が乗る車の進行方向にある、もう一つのもの――五十メートルほど先にいたのは、まだ十歳にも満たないような小さな男の子だった。

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