序章
第1話
その日の夜空に浮かんでいたのは美しい満月だった。
だが、それは分厚く広い雲に何度も覆われて、なかなかその光を地上に落とせない。
そのはずなのに、中継現場として選ばれた廃校の校庭はこうこうと照らされて眩しかった。何十とあるスポットライトのせいだった。
スポットライトは校庭だけではなく、他の至る所も惜しみなく浮かび上がらせた。
雨風によってすっかり朽ち果てた木製の滑り台。錆び付いたブランコや鉄棒。リングだけが貼り付いている、ボロボロのバスケットゴール…。
元々はたくさんの子供達が通い、賑わいを見せていた小学校だったのだろう。
だが、今の校舎にその面影はもうどこにもない。たまに、何人かの若者グループが肝試しなどでやってきては、ゴミを捨てて去っていくだけの場所となってしまっていた。
そんな校庭に、人工的な光が降り注ぎ、その中でたくさんの人間達が集まっていた。
彼らの表情は歓喜と興奮に満ちていた。中には手を振り上げ、「まだか、早く始めろ!」と叫んでいる者さえいた。
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