第102話
どうだ、浩介。ここまで読んでみた感想は?
これでもまだ俺を、尊敬する父親だと言えるか?たった一人の友達を身捨てて逃げた、こんな俺を…。
本当は心根の優しいお前の事だ。お前の身を案じた俺が、お前の苦しみを少しでも和らげるために嘘の告白をしてくれているんだと考えるんだろうな。簡単に想像できるよ。
だからきっと今頃、お前はこの手紙から目を背けたくて仕方ないだろうというのも分かる。分かるんだが、決して目を逸らすな。最後まで読め。読む事ができないのなら、近くにいる刑事さんか誰かに読んで聞かせてもらえ。
俺は逃げてしまったが、せめて息子のお前にだけは逃げてほしくないからな…。
次に気が付いた時には、俺は自分の家の前に立っていた。
智之を突き落とした事が夢だったんじゃないかと思えるくらい、辺りはしんと静まり返っていたが、ぜいぜいと大きく乱れている自分の息遣いと大量に吹き出ている汗が、決して夢ではないという事を責め立てているようで、俺はたまらなく恐ろしくなった。
ふらついた足取りで家の玄関をくぐると、そこにはおじいさんがいた。胡坐をどかりと組んで、鋭い目で中に入ってきた俺を睨み付けてくる。一晩中そこに座っていて、俺が帰ってくるのを待っていたというのがすぐに分かった。
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