第97話
「自分の息子をこんなふうに言うのもなんだけど、智之ってかなり変な奴だろう?人から言われるまま、何でもかんでも『はい』の一言で引き受けちまうお人好しでさ」
「ああ…、はい」
「そんな所は死んだ母親そっくりなんだ。性格も遺伝しちまったのかね、おとなしいと言えば聞こえはいいが、昔っから主張性がなかったって言うか…」
「……」
「だからな、あいつが友達と一緒に花壇作りを始めたって聞いた時は本当に驚いたよ。それまでパシリ扱いされても、友達と呼べるような奴があいつにはいなかったからさ」
「…っ、それって…」
「智之の奴、毎日君の事ばかり話すんだ。よほど嬉しかったんだろうな、君と花壇作りをするのが」
「そんなに…、話をするもんなんですか?」
「うん?そりゃあな、たった二人の家族な訳だし」
あ、まただ。そう思った。
智之の口からも似たような言葉が出た。つまり、この親子はお互いにそう思い合って、その気持ちを尊重し合ってるって事だ。
心底、この親子が羨ましかった。
俺とおじいさんの間には、決してこんな優しい関係性はない。少なくともあの頃の俺は、互いに嫌悪して、互いに忌み嫌って、もしかしたら互いの存在すら疎んでいるのかもしれないと考えていたから。
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