第96話
さっきも書いたが、六畳ほどしかない狭さだ。
俺が腰を下ろしたすぐ側に小さくて古い卓袱台があり、その卓袱台を置くスペースを作る為に二組の敷き布団が部屋の隅に押しやられていた。
部屋の東側の壁に、襖で作られた引き戸があった。卓袱台の他には特に目立った家具など見られなかったから、多分そこに小さなタンスか何かがあるんだろうなと思ったが、それと同時に、何だか急に智之に対して申し訳なくなってきた。
自分から言い出した事とはいえ、本当は、自慢するには程遠いようなこんな家に俺なんかを連れてきたくなかったんじゃないだろうか。
優しい智之の事だから、俺の様子がおかしかったのを見て、やっぱり断ろうとしていたのが後に引けなくなってしまったんじゃないだろうか。
そんな事を悶々と考えていたら、突然父親が声をかけてきた。
「清水君、ごめんな?」
「えっ…?」
「花壇作りだよ。智之が無理矢理手伝わせてたんじゃないか?」
「あ、いや…」
すぐには答えられなかった。「はい、最初はそうでした」の一言を言うのが、何だか躊躇われてな。
それに気付いたのかは分からなかったが、父親は俺の言葉を遮るように次から次へとしゃべり続けた。
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