第87話
だが、そんな俺をお前のおじいさんは相も変わらず認めてくれなかった。
夏休み前から毎日Yシャツやズボン、果てには顔まで土色に汚して帰宅してくる俺を、自分に反抗して何かロクでもない事をやらかしているのではないかという疑惑の目で、ほんのわずかの間だが睨んでくる。そして、何も言おうとしない。
花壇で智之と一緒に作業している時は楽しみも生まれてきていたのに、帰宅して最初におじいさんと目が合うと一気にその気分が萎えて、嫌な気持ちになる。
「何だ、その薄汚い恰好は!毎日毎日出かけて、どこで遊び呆けてるんだお前は!!」
いっそ、こんなふうに怒鳴りつけてくれれていれば、どれだけ楽だったかしれない。そうしたら俺も言ってやったんだ。どうして俺のやる事為す事が、そんなに気に入らない!?俺は親父とは違う人生を生きている、別の人間なんだぞってな。
でも、おじいさんはいつも何も言ってくれず、無言のままで俺を睨むだけだった。あの日が来るまで、ずっとそうだった。
俺が何をやっても、おじいさんには認めてもらえない。とても悔しい。
ほんのちょっと手伝っただけなのに、智之は俺を認めてくれて、友達になってくれた。とても嬉しい。
そんな相反する二つの気持ちが、あの頃の俺の全てのバランスを辛うじて保っていたんだと思う。浩介、お前がそうだったようにな。
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