第83話
「変な奴だな、お前」
吹き出しながらそう言う俺に、智之は「へ?」と間抜けな声をあげる。それに構わず、俺は言葉を続けた。
「言葉の通りだっつの。俺みたいな奴に声をかけて、大した得にもならない花壇作りやって…何がそんなに楽しいんだよ、お前」
「清水君は、楽しくなかったの?」
「それは…」
「僕は楽しかったよ」
そう言って、智之はニコッと笑った。嘘偽りのない笑顔だった。智之はもう一度言ってくれた。
「僕は楽しかったよ。清水君と一緒に花壇作りできてさ…清水君と、友達になれて良かった」
浩介、父さんは思うんだ。
出会い方、そしてその後の付き合い方はお前にとっては最悪でしかなかったかもしれない。
だが、もしかしたら、真鍋君はお前と友達になりたかったんじゃないか?いや、そうであったに違いないと父さんは思う。
きっと、真鍋君にもそれなりの事情があったんだろう。昔の父さんのように素直になれなくて、ちょっとの事で苛立ちを隠せなくて、何かにそれをぶつけなければ自我が保てなかったんじゃないだろうか…。
だからと言って、彼がお前にした事は許されるべき事ではない。そして、お前が彼にした事も、俺が智之にした事も…。
それは、ほんのちょっとの歯車の違いでそうなるのかもしれないな。少なくとも、俺達の場合はそうだったんだ。
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