第81話
それから毎日、放課後になると智之は「清水君、行こう!」と言って、俺を花壇に引っ張っていくようになった。
智之がそうする度に、クラスの連中はまるで珍獣でも見るかのような眼差しを俺達に向けてきた訳だが、それも仕方ないと思う。見た目も性格も正反対で、何の接点もないように見えた俺と智之が放課後になると決まって二人で教室を出て行くんだ。さぞおかしかったに違いない。
それでも、俺は智之の腕を振り払う事ができなかった。
皆の目の前で腕を引っ張られて連れ出される様は気恥ずかしい事この上なかったのに、花壇が徐々に元の姿に戻っていくのを真剣かつ楽しそうに眺める智之の顔を見ていると、全く悪い気がしないんだ。それどころか、俺まで少しずつ楽しくなっていった。
そうやって手伝い始めて五日目の頃、やっと花壇の土を全部均し終えた。余分な雑草も全部抜き去り、健康的な濃い茶色をした土が自分の足元一面に広がったんだ。強い達成感と、気持ちのいい土の匂いを感じたよ。
「く~っ、やっと終わったなぁ」
「そうだね。勝負は僕の勝ちだけど」
「あ!?何だよ、それ」
「僕が一日早く始めたんだから、当たり前でしょ。あ、僕は果汁100%のオレンジジュースでいいから」
「ふざけんな!」
殴る真似をしようと振りかざした俺の手も、あははと笑いながら防御の真似事をする智之の手も土色に汚れて、所々にマメができてた。心地良い痛みだったよ。
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