第79話
真夏という時期のせいで日が高くなっているとはいえ、放課後の時間にもなってくれば、嫌でも太陽は西寄りに少しずつ傾き始めるよな。
俺の母校の西側の敷地も例外じゃなく放課後になると太陽の光が午前中よりも強く照る。
照らされる校舎が足元に作り出す影も短かったから、実質涼む場所なんてなかったし、何かを育てようとするには日の光が強すぎて不向きでしかない。
それなのに智之は、そんな場所に俺を連れてきた途端、とても気持ちよさげに両腕を空に伸ばしながら、「どう?やりがいがあるでしょ!」なんて言ってきた。
敷地の一角にある花壇とやらは、やりがいがみなぎるどころか、さらに萎えていく有様でしかなかったよ。
本当に何年間も、誰も手入れしていなかったようだから、素人の目で見ても分かるくらいに土が痩せているし、荒れ放題。花壇と言うより、雑草の楽園だ。
それでも一人で土を均し始めたと言うんだから、ごく一部分だけ雑草が抜き取られ、新しい土も入っている。そこをじっと見ていた俺に、智之は「はい」とシャベルを差し出してきた。
「清水君は右からね」
「あ?」
「これで雑草と古い土を掘り出していってよ、僕は左からやるから。より多く均した方が勝ち。負けたら缶ジュースおごりだから」
矢継ぎ早でそう言って、智之はもう一つのシャベルを担いで花壇の左側に向かった。俺の口はすぐさま文句を並べ立てたよ。
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