第77話
それを智之に「暇だろう?」と捉えられて、急に恥ずかしくなった。赤い顔を見られるのも嫌で、俺は智之の腕を振り払って叫んでたよ。
「暇じゃねえ!」
「じゃあ、いつならいい?とりあえず、僕は今日からやろうと思ってるんだけど」
「知るか!他当たれ!!」
そしてそのまま、俺は智之に背中を向けて、逃げるように教室を出た。この時の智之に対する第一印象は、ただひたすらに「ムカつく奴」でしかなかった。
そんな智之は有言実行、さっそくその日から花壇作りを始めたようで、翌日の朝、教室で見かけた時は、あいつのYシャツは所々土色に汚れていて、顔や両手も同じ有様だった。
「お前どうしたんだ、その格好は!?」
朝のホームルームの為に教室に入ってきた担任もさすがに驚いた顔をしてそう尋ねてきたが、当の本人はあっけらかんとした表情で答えてたな。
「校舎の西の方の花壇を作り直してるんですけど、思ったより楽しくなっちゃって。つい早起きしてやっちゃってました」
俺は、智之の方が、よっぽどの暇人だと思ったよ。
体よく、誰かに利用されて、それなのにへらへら笑っていて。本当にムカつく奴だと、この日の朝まで思っていた。
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