第62話

この次の日は、机と椅子は無事だったものの、机の中に入れたままにしていた何冊かの教科書やノートがズタズタに切り裂かれ、机の上に投げ出されていた。


 これまでの授業の要点を自分なりに詳しくまとめて書いてあったノートは、その時点で役立たずの紙切れだ。教科書もこんな有様では、とても使えない。


 僕はすぐに売店に赴き、自分の小遣いでノートを買い直し、それまでの分を全て書き写した。教科書はノートと一緒に買ったセロハンテープを大量に使い、ジグソーパズルのように繋ぎ合わせた。


 休み時間の度にそんな事をしている僕の姿に、クラスメイト達もさすがに気付いて遠巻きに見ている。皆の目に、その時の僕はどう映っていたのだろうか…。


 ただ一つだけ言えるのは、そんな僕を見て笑っていたのは真鍋だけだったという事だ。


「よう、清水。地道な努力は大変だなぁ。ちまちまやってて女々しい奴」


 僕は真鍋の声に反応せず、無言を貫き通した。すると、その翌日、今度は体育着がペンキまみれになっていた。


 この時も、真鍋だけが笑っていた。それでも僕は黙っていた。クラスの皆もうすうす犯人が誰かなんて分かっていただろうが、誰も何も言わなかった。


 それでいいと思った。僕とあいつは違うんだ、その事だけ分かってもらえてれば良かったから。

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