第51話

「どういう、意味?」


 訳が分からず、僕はそう問いかけた。


 真鍋は相変わらず薄気味悪いニヤニヤ顔で僕を見つめながら、何度か煙草の煙を吸い込んでは吐き出すを繰り返している。奴が吐き出した煙の嫌な臭いが僕の元までやってきて、思わず「うっ…」と唸りながら顔をしかめた。


 それを見て、何が面白かったのか、真鍋はくつくつと笑いながら僕の方に煙草の箱を差し出してきて、言った。


「お前も吸え、慣れちまえば大した事ない」

「いらないよ」

「遠慮すんなって」

「そんなんじゃない、誰が吸うもんか!」


 僕は持てる限りの嫌悪感を言葉に乗せて、真鍋を睨み付けてやった。だが真鍋には全く通じていないようで、奴は早くも短くなってしまった煙草を床にペッと吐き出すように落とすと、わずかに肩をすくめた。


「やっぱ、俺の第一印象通りの奴だな。お前」

「何…?」

「頭は良さそうだが、その分だけ面白みに欠ける奴。ジョークなんかも通じなさそうだし、俺の事もどこか見下していそうだ」


 僕は言葉を詰まらせた。全て、その通りだったからだ。


 ほんの一瞬だが、真鍋に僕の事を全て見透かされてしまったような気さえ起きて、僕はぶるっと身震いを起こした。

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