第47話
その後。結局、担任に言い負かされる形となって、二つの高校を受験する事になった。そして結果、第一志望には落ち、滑り止めだとバカにしていた第二志望の高校への入学が決まった。
父の会社がやっと軌道に乗り始めたばかりだったので、編入試験を受けたいなどとわがままはとても言えなかった。
翌年の春。少し大きめのブレザーの制服に袖を通した僕を見て、姉が面白半分に写真撮影会などと称して携帯電話のカメラ機能をフル活用していた。
「ほら、浩介!せっかくの入学式なんだから、笑って笑って~!」
あれこれと指示がうるさい姉に逆らっても時間が長引くだけなので、僕は仕方なく笑う。後で撮れた写メを見せてもらったが、やはりどこかぎこちない変な笑顔をしていた。
でも、今思えば、あれが一番最後にまともに笑った記憶なのかもしれない。
入学式の翌日。僕は時間に余裕を見て登校し、一年C組の教室に入った。
教室にはもう何人かの同級生がいて、それぞれ自己紹介をしたりしている。同じ中学からやってきた人が誰一人いない僕には、ほんの少し寂しく感じられたが、それでも昨日のうちに自分に宛がわれた窓際から二列目の席に腰を下ろした時だった。
「…お前、何て名前?」
急に声をかけられ、僕は驚いて反射的に左方向を振り返る。窓際の席に、一人の男子生徒がニヤニヤと笑いながら座っていた。それが、真鍋太一との出会いだった。
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