第39話

新塚はさらに言葉を続けた。


「最初に智香にケンカ売ってきたのは城ノ内じゃん!あいつ、ちょっと成績いいってだけで、いつも余裕しゃくしゃくって感じで智香に近寄ってきて…城ノ内のせいで、智香が家でどんなに怒られてるかあんたも知ってるでしょ!?」

「知ってるよ。だからあたし達も智香と一緒になって、あいつを…でも、昨日の智香ヤバいって感じなかった?もう腹いせなんてレベルじゃない…城ノ内をいたぶる事自体を心から楽しんじゃってるよ…ねえカナ、そう思わないの?あんなの、あたし達の知ってる智香じゃないよ!!」

「そ、それは…」


 坂口の言葉は的確だと思った。


 あの時の斉藤の言動は、とても尋常とは思えない。下手をすれば城ノ内に切られていたのは僕ではなく自分だったのかもしれないのに、その危険性すらスリルと捉えて楽しんでいたような。


 そう考えた途端、僕の背筋にうすら寒い何かが走る。僕はたまらなく、城ノ内と斉藤の二人が怖くなった。


 そんな僕を前にして、しばらくひそひそと話し合っていた坂口と新塚は、急にずいっと近寄ってきて、涙を懸命に堪えながら訴えかけた。


「お願い、先生!智香を助けて!!本当は智香、いい子なんだ…あんな事、できるような子じゃなかったんだから!」

「城ノ内にした事、あたし達が代わりに全部謝るから…智香を止められなかったあたし達も悪かったから…だから…!」


 さっきまで善処するなんて偉そうな事を言っていたくせに、僕は二人に今度は何も言えなくなっていた。

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