第34話

「あんたさえ、あんたさえいなかったらぁ!!」


 憎しみの感情を爆発させた城ノ内は持っていたカッターナイフを振り上げ、斉藤に向かって飛びかかるように詰め寄る。それまで、何も起こるはずがないと思っていたのか、振りかざされた刃物を目の前にして斉藤の顔も身体も一気に強張った。


 ダメだ、ダメだ、ダメだ!!


 カッターナイフが振り下ろされる直前、僕は二人の間に立つ事ができた。斉藤に背中を向け、城ノ内の両手首を掴む格好となる。


 急に動かなくなった自分の両手に驚きを隠せず、城ノ内は涙で真っ赤になった両目で僕を見上げてくる。城ノ内は叫んだ。


「いやぁ!!先生、離して!こいつを殺したいのよぉ!」

「落ち着け、城ノ内!何があったんだ!?斉藤、お前も説明しろ!この状況は一体…」

「ここまで見ても、分かんないんだ?神保先生、鈍感ですね」


 僕の乱入に最初は驚きはしたものの、すぐに斉藤はふふんと息を漏らして、あの大人びた顔立ちで僕を嘲笑った。


「これが、『友達同士でふざけ合ってただけです』って訳ないでしょ?」


 唇の片端だけをにいっと持ち上げ、またおかしそうに笑い出す斉藤の様子に、僕は背筋がぞくりと冷たくなる。その間にも、城ノ内は僕の拘束から抜け出そうとじたばたもがいていた。

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