第33話
「どうしたのよ」
僕がいる事に皆気付いているはずなのに、特に斉藤は僕の存在を完璧に無視する形で城ノ内に話しかけた。
「あんた、それで私をどうにかするつもり?笑わせないでよ、できるはずないじゃん」
「…っ…」
「そういうところがムカつくんだよ。できないくせに無理して意気がってさ…やれるもんならやってみなさいよ、ほらほら~」
斉藤は両手をいっぱいに広げ、異常にも見える満面の笑みを城ノ内に向ける。城ノ内の両手は震え始め、瞳に涙がたまっていくように見えた。
それを見て、斉藤は何がそんなに面白いのか、ますます黒い笑みを深く、濃くしていく。実に楽しそうに「ほらほら~」を繰り返し、何歩か城ノ内に近寄る。その異様な光景に恐れをなしたのか、二人目と三人目の女子生徒は悲鳴をあげながら教室を飛び出していった。
そんな斉藤の姿を見ずに済ませたいのか、城ノ内は視線を足元に落とす。そして、何事かぶつぶつと呟きだした。
「私…だっ、て…なのよ…。だから…」
「んぅ?何よ、ビビリちゃん。聞こえないんですけどぉ?」
「私だって、人間よ…!」
ふざけた様子で耳を澄ましてきた斉藤に、城ノ内は声を荒げながら顔を上げる。その顔には、今まで僕が生きてきた中で一度も見た事のないすさまじいまでの憎しみがあった。
それを感じ取った瞬間、僕の足はもう二人に向かって走り出していた。
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