第32話
普段はとても整然と並んでいる生徒達の机と椅子の大半が、まるで嵐に巻き込まれてしまったかのようにぐちゃぐちゃに倒されている。
そんな中でも、何とか縦に並んだ列だけはギリギリの状態で保たれていて、どれがどの生徒の物なのかは何とか区別が付いた。それが、かえって悪かった。
窓際の一番前の席――すなわち、城ノ内の席なのだが、そこには無残なほどにびりびりに破られ、文字と呼ぶには判別が難しい落書きが施された教科書やノートが何冊もあり、おまけにその中央には花が一輪活けられた花瓶が置かれていた。
すぐにどかしてやろうと思ったが、その机の方からつんと鼻をつく、独特の匂いが寄ってくる。よく見てみると、それらが置かれた机の上には、さらに透明のジェル状のような物が大量にぶちまけられていて…接着剤だと分かった。
そして、そんなものよりさらに信じられない光景が、教室の後方に広がっていた。
コンビニで見た二人目と三人目の女子生徒は、しきりに「ヤバいヤバい」と繰り返しながら、じりじりと少しずつ後退りをしているのに対し、斉藤は正面に立つ城ノ内から少しも目を離さない。それどころか、ふふんと小さく笑い、彼女を挑発するかのような目で見つめている。
その城ノ内は、上半身が下着姿だった。スカートも太もも辺りまで破られ、ほとんど役目を果たしていない。茶色がかった髪も、顔も…身体中のあちこちに埃と痣が付きまとっていて、その両手には鋭い刃を出したカッターナイフが握り締められていた。
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